ウマ娘3期って

アニメ

 シングレがやってる時期に3期の話をすんのかい、という話ですがまあ話したい。

 ウマ娘3期って個人的には60~65点くらいのアニメなんですよね。キタサンブラックという「史実で強いまま引退した馬」をどうやってウマ娘で表現するのかは放映前から大いに疑問がありました。一応ドリームトロフィーリーグ(以下DTリーグ)というのが存在しますし、アプリウマ娘でも、それこそシングレでも触れられているのですが、一言でいうと設定が深くない。「稼げる」というタマモクロスの発言であったり、サクラチヨノオーシナリオにおけるマルゼンスキーの「テッペンを越えた」発言であったり、すなわち競技からエンタメの世界へ、という印象で、現実でいうフィギュアスケートの世界を参考にしたような感じなんでしょうかね。

 史実であれば「種付け生活があるから(そのまま走ってても稼げるけど)引退する」ことがあります。それがなかったらロマンチックウォリアーのような方向になりますよね。ウマ娘では種付け生活が設定に組み込めないので、今まではDTリーグでお茶を濁していたけれど、とうとう3期でその問題に正面から立ち向かわなければならなくなった結果、やりきれないでズッコケ展開になってしまったというのが最大の低評価ポイントだったと思います。

 でも最初は結構勢いがあったと思います。1話と3話で「サンデーレーシングの馬もウマ娘になるんだ!」という最強のカードを惜しげもなく切って見せたのは良かった。ところがドゥラメンテは影が薄くなり、トゥインクルシリーズを引退してDTリーグに移行しオルジェンと戦う、と啖呵を切って見せたゴールドシップでしたが、それがなんなのかは希薄で、ゴールドシップ格好良かったなあというだけでした。

 また、ゴールドシップの引退とキタサンブラックの引退はどうしても照応しません。したがって3話は「単発では盛り上がったけど『暴君、貴婦人』の名前を出したかっただけじゃね?」と思ったり。仮に両者が似たような状況で引退していれば、先輩としてのゴルシにさらに深みが出たような気がするんですけど、まあ史実が史実なので仕方ない。

 で、その後は普通に萌えアニメが続きます。マリアライトに対する「誰~!?」とか話題になりましたけど、アレは全体の評判が良ければスルーされる類のものですね。というか、キタサンブラックって率直にいうと、上と下の世代を支配してしまったので、ライバルというライバルがマジでいないなと思いました。もちろんサトノクラウンやシュヴァルグランに敗れてはおりますが、古馬王道路線を走りきって4勝されてしまっては、流石にライバルですとは言えないでしょう。2018年まで現役を続けていても、おそらく天皇賞・春と有馬記念は勝ってたような気がします。

 話を戻すと、割とほのぼの進んでいたところで宝塚記念の敗北で急激に暗雲垂れ込めます。実際のところ陣営だって「訳わからん」という感じだったので、まあそれはいい。ただ、なぜ「ピークアウト」という単語を使ってしまったのか。その後天皇賞・秋を1着、ジャパンカップを3着、有馬記念を1着する馬に何を言わせとるんだ……、じゃあ負けた馬はピークアウトしたキタサン以下ってことですか?となるわけです。(勝負の世界なので現実的にはままあることですが)

 「史実を曲げられる」ところがウマ娘の良いところだったような気がしていたんですが、3期においては史実を曲げないことにやたらこだわった結果、視聴者がかなり真面目に物語を捉えてしまい、最後の最後で史実とかなりズレてしまうというよく分からない決着になったため、後味の悪さだけが残る物語になってしまったという印象です。

 ただ、こうしなきゃいけないのは分かります。なにせ史実キタサンブラックの終わりというのは「これが漢の引き際だ」があまりにもデカすぎる。キタサンブラックを語るうえで避けては通れぬ名実況なわけで、アニメ化を立ち上げた瞬間から結末は決まっていたことでしょう。ところがまたもや新たな壁が立ちはだかります。「ウマ娘」なために「漢」が使えないのです。だから「スター」とかいうダサいけどサブちゃんの顔がチラチラするからそんなに否定も出来ない、でも衣装込みでやっぱダサい単語を使ってしまったわけです。あまりにもキタサンブラックというのはアニメウマ娘と相性が悪すぎるんじゃ!

 ちなみに僕の妄想では、キタサンブラックが最後の直線で、実況を引き取る形で「これが『私』の引き際だ!」(「ウマ娘としての私」という意味も込めて)と叫ぶ予定になっていましたが、そんなことはなかった。ま、そもそもピークアウトを出した時点でそんなことを言われても困るので良かったんですが。

 しかし、じゃあどうしたら良かったんだよ?と問われると結構困る。作劇的に引退というか「漢の引き際だ!」はマストです。したがって身を引かせなければならない、でも種付けは理由にならない、だったらピークアウトにするしかないじゃない、という感じでしょう。

 代わりに思いつくのは、敗北をきっかけに、「周囲の応援してくれる人の顔を曇らせてしまうくらいなら私はここで身を引いて、よりエンタメ色の強いドリームトロフィーリーグに移ろう」という気持ちになる、くらいでしょうかね。すなわち「自らの勝利への欲求」よりも「周囲の人の笑顔」が大事になったということで、ピークアウトという言葉は使わずにメンタル面の変化に落とし所を求める感じでしょうか。自分を見つめ直した時に、原点に帰るという形でね。人気者であるお父さんへの憧れが強い描写もあるので、すんなりつながると思ったりも。

 実際のところ、アニメでは特に移籍とかはなく卒業式みたいな雰囲気で終わりました。じゃあピークアウトという言葉を出して、明らかにピークアウトした馬の行き先として設定されているDTリーグの名前を出したのはなんだったのよ、という妙なチグハグさも気になる部分でしたね。

 というわけで、自分の感想を言語化出来たのでスッキリしました。言語化とは排泄のようなものですね。
 そして今シングレを見てるわけですが流石に漫画自体が売れてるし面白いだけあって安心がある。まあ変なことにはならんだろう、ということでこのまま走り抜けてほしいですね。

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